世界から猫が消えたなら

同世代の有名人、はたくさんいるけれど、エンタメ業界でダントツに有名なのは、映画プロデューサーの川村元気氏。数々のヒット映画をプロデュースし、書いた小説は大ベストセラー。組織の中に身を置きつつ、同世代でここまでのことができるのは本当にすごいと、尊敬している。

しかしながら、同世代だからこそ悔しい部分もある。だからなかなか、この大ベストセラーになった本を読んでいなかった。本の帯に連なったビックネームたち、いかにもヒット路線まっしぐらな匂いも、個人的には避けたい雰囲気だ。

とはいえ、成功者からこそ、やはり学ぶべき、とエラそうなことを言いながら、買ってみた。

・・・やはり、今世の中に受け入れられている本は読んでみるものです。
映画プロデューサーとしても大切にされているであろう「普遍と非日常」のバランスのとれたミックスが、非常にシンプルに盛り込まれている。言語表現に奥深さや情緒はない。コトバの使い方に感動させられるようなことはない。説明的に入る()の中の呟きが、なんとも蛇足に感じられるのは好みだろうか。ライトノベルっぽい。

逆に、かなりのスピードで読むことができるので、忙しい現代人向けともいえる。

「普遍」と「非日常」は、家族(猫も含め)との愛情と、悪魔との契約。そう考えると、ゲーテファウストから続く、ド定番の設定だ。アナ雪も、最後は「家族の愛」を掲げていた。誰にも否定されず、でも、現代では貴重にすらなってきている”家族愛”。いかにこのテーマを時代にフィットさせながら伝えていくか。そこに多くの人に喜ばれるストーリーテリングのコツがあると感じた。