革命前夜

戦後の経済復興で、よく日本と比較されるのがドイツ。しかしながら、ドイツは長きにわたり東西に分断され、全く別の主義を持った国として、それぞれ歩みを進めた。

本作は、音楽という視点を通すことにより、単純な自由資本主義の礼賛にならず、とても多面的に、分かりやすく当時の状況が説明されている。

登場人物たちも個性的だ。戦後の東ドイツ。そこで育った人、そこにわざわざ留学する人。皆、少しずつ、訳ありだ。背景は違えど、音楽に対する情熱は等しく熱い。音楽に国境はないというが、そんなことはない、と考えている主人公。しかしながら、留学し、音の純化を求めている。この小説の中では、音楽と社会、その両方における理想と現実の狭間を描き、見事に説明仕切っている。

Amazonのレビューに、音楽を聴きながら読みたくなる、と書いた人がいたが、まさしく自分もそう。YouTubeで音楽を聴きながら、読んでしまった。
そして、弾き手によって、同じ曲でもここまで違うのか、ということに気づかされた。弾き手の個性、ということを知りながら読むと、より登場人物の個性が浮かび上がってくる。

非常に興味深く、楽しんで読めた。音楽、もしくは東西ドイツの歴史に関心のある人にはオススメ。

※作中で紹介されている楽曲の中で、一曲、どうしても見つからない曲があった。調名違いではあったのだけど、それでいいのかどうかスッキリしない。むむむ。