悲しみのイレーヌ
話題のサスペンス。
噂に違わない面白さ。めまぐるしく変わる状況と、そのテンポの良さが飽きさせずに一気に読ませてくれる。登場する胡散臭い人物たちも、個性的で読ませてくれる。
作者のルメートルは、作家になる前にはテレビの脚本を書いたりもしていたとのこと。通りで、テンポが良く、描写が映像的で、人物たちも生き生きしているはずだ。
ただ、物語で最もインパクトのある展開が本のタイトルから想像できてしまうのはもったいない。なぜこの和訳にしたのか。
この悲劇的な終わり方で、どん底まで落とされる救いようのない結末は、よくぞやり切った、と言いたくなるほど。
犯人との広告欄を用いたやり取りはいささかやり過ぎでは、うまく行きすぎたこともあり、やや興醒めしたものの、全体的にはとても面白かった。
ページを開いて最初に感じる違和感。なぜ、第1章、と書かれたページの後に、登場人物が説明されるのか。それが分かった時には思わず、ううむ、と唸ってしまった。
万人にお勧めできる本ではないが、サスペンスが好きな人にはぜひ読んでもらいたい。