革命前夜
戦後の経済復興で、よく日本と比較されるのがドイツ。しかしながら、ドイツは長きにわたり東西に分断され、全く別の主義を持った国として、それぞれ歩みを進めた。
本作は、音楽という視点を通すことにより、単純な自由資本主義の礼賛にならず、とても多面的に、分かりやすく当時の状況が説明されている。
登場人物たちも個性的だ。戦後の東ドイツ。そこで育った人、そこにわざわざ留学する人。皆、少しずつ、訳ありだ。背景は違えど、音楽に対する情熱は等しく熱い。音楽に国境はないというが、そんなことはない、と考えている主人公。しかしながら、留学し、音の純化を求めている。この小説の中では、音楽と社会、その両方における理想と現実の狭間を描き、見事に説明仕切っている。
そして、弾き手によって、同じ曲でもここまで違うのか、ということに気づかされた。弾き手の個性、ということを知りながら読むと、より登場人物の個性が浮かび上がってくる。
非常に興味深く、楽しんで読めた。音楽、もしくは東西ドイツの歴史に関心のある人にはオススメ。
※作中で紹介されている楽曲の中で、一曲、どうしても見つからない曲があった。調名違いではあったのだけど、それでいいのかどうかスッキリしない。むむむ。
ブルータスからのドミノ!
年末年始に読む本を探そう、とブルータスの読書特集を購入。200冊以上が紹介されていながらも、なかなか読みたい本はない。ざっくり読んだところ、5冊くらいかな。またその中で、Kindle化されている本は少ない。ロートレックの帽子、読んでみたいんだけどなぁ。。。
年末年始に読むつもりで買ったのに、もう一晩で読み終わってしまった! これは誤算だ。
群像劇はどうしても、都合良すぎでしょ、というツッコミたくなるところが出来てしまいがちで、本作もそれを言ったらキリがない。しかしながら、映画のように情景が目に浮かび、話はテンポよく進む。要は細かいところは気にしちゃいけないのだ。
頭からっぽにして、漫画を読むように楽しむ。後に残るものは特になかったけど、エンタメ作品なんてそんなもの。楽しんだもの勝ち!
マラソンの本2冊とシューズ選び
42.195kmの科学
マラソンは毎日走っても完走できない
小さな頃から運動音痴で、運動会なんて無くなればいいのに、と思いながら過ごした小さな頃。当然部活は文化系。できるだけ体を動かすことは避けて生きてきた。
しかしながら30を越え、お腹の出っ張りも気になる頃、ヘルシアなんかも所詮気休め。やはり多少は体を動かさないと、と始めたランニング。始めてみると、体は引き締まり、運動する満足感もあって、何だか楽しくなってきた。
そして先日、不安を感じながらもフルマラソンに挑戦。その結果、一応完走でゴールしたものの、途中で疲れ、エイド食べ歩きツアーを敢行。その時、走る気力はなくなっていた。
それでも再度足を上げ、4時間40分でゴールし、満足しているものの、どこかやはり悔しい。今度は、一度も休まずに走り切りたい、そう考えるようになった。
まずは、装備の確認。
今の靴は、貰い物のランニングシューズ。若干、足に合わず、痛むこともある。さらには、ウェア。これまではトレッキング用のズボンに長袖のTシャツ。機能的にはいいものの、ハタから見るととても走る格好ではない。
靴はきちんと専門店で測って、足に合う物を買おう、と3D測定なんかもしてもらった。日を変え、二軒回ったところ、幅は3Eとやや広く、土踏まずが低く、サポートした方がいい、とのこと。オススメされたのは、アシックスのGT2000SW。なんだ、1番人気!と札のついた靴か、と正直没個性な感じがしてガッカリした。こんなにしっかり測ったのに。
しかも最新のニューヨーク4というのを店員さんに勧められた。隣にあるおよそ半額のニューヨーク3じゃダメなのかな。。。聞けない自分も情けないけど、どうしたらいいか悩ましい。
ウェアは、アウトレットでアンダーアーマーのタイツを買った。おお、なんだかそれっぽくなってきた!
そして、そもそもどうやって体を鍛えるか。それはきちんとした指南が必要だ。
そこで、早速本を購入。1冊目は、話題のフォアフット走法に関して。なるほどなー、と理屈は理解。ただ、自分はこの本に出てくる人たちのようなストイックなランナーでもないし、高地で自然の中で暮らしてたりはしていない。中途半端では逆効果では、という気もしてしまい、自分向きじゃないかな、と感じた。
憧れるんだけどね。。。
さーて、来年は止まらず42.195キロ、走れるように頑張るぞ!
その女アレックス
悲しみのイレーヌが面白く、続編と言われる本作に手を出す。
アレックスという女の見え方が、読み進める内にドンドンと変わる。なるほど、そうなるのか、と展開していくのはさすがの構成力。
ただ、前作に比べるとやや後半に無理を感じる。なぜ、カミーユたちはここまで自信を持って犯人を追い詰めることができるのか、そして、真実ではなく正義を優先するラストは、結局アレックスの手の中で踊らされてるだけのような印象で、ややスッキリできなかった。
また、前作ではいい面も悪い面も見せて深みのあった警察のキャラクター作りも、一面的になり、物足りなさを感じる。
十分に面白いが、やはり一作目があっての二作目、そう感じずにはいられなかった。とにかく、読もうか悩んでいる人には、順番を間違えないよう、アドバイスしたい。
悲しみのイレーヌ
話題のサスペンス。
噂に違わない面白さ。めまぐるしく変わる状況と、そのテンポの良さが飽きさせずに一気に読ませてくれる。登場する胡散臭い人物たちも、個性的で読ませてくれる。
作者のルメートルは、作家になる前にはテレビの脚本を書いたりもしていたとのこと。通りで、テンポが良く、描写が映像的で、人物たちも生き生きしているはずだ。
ただ、物語で最もインパクトのある展開が本のタイトルから想像できてしまうのはもったいない。なぜこの和訳にしたのか。
この悲劇的な終わり方で、どん底まで落とされる救いようのない結末は、よくぞやり切った、と言いたくなるほど。
犯人との広告欄を用いたやり取りはいささかやり過ぎでは、うまく行きすぎたこともあり、やや興醒めしたものの、全体的にはとても面白かった。
ページを開いて最初に感じる違和感。なぜ、第1章、と書かれたページの後に、登場人物が説明されるのか。それが分かった時には思わず、ううむ、と唸ってしまった。
万人にお勧めできる本ではないが、サスペンスが好きな人にはぜひ読んでもらいたい。
ワーク•ルールズ!
話題になっていたグーグルの人事、福利厚生に関する思想と実践。人事もプルフェッショナルが、課題意識を持って仕事をするとこんなことになるのかと思い知らされた。この本の中でも紹介されていたが、人事は、他の部署で目立った成果を挙げられず真面目さが取り柄の人、が就く仕事という印象が少なからずある。
社員に優しいイメージのグーグル。確かに100%仕事に打ち込めるよう、万全の体制が整っている印象を受けた。その反面、パフォーマンスが伴わなかったり、やり方が合わなかったりした人には、お引き取り願う、など、ドライな一面も隠さない。羨ましい、と思いつつ、ここでやっていくのは大変そうだ、とも感じた。
本は興味深いトピックが多い。話題になった、屋外広告の難問で、採用された人は一人もいなかった、というのは驚きだ。まだ、ナッジという概念は初めて知り、とても面白いと感じた。もっと良く知りたい。
印象的だったのは、会社の仕組み作りに、大学の研究を活用していること。どうしたら環境が良くなるかの仮説を、研究や論文をベースに立てて、実際の活動で検証する。人事施策で、こういったプロセスを経ることがとても衝撃的だった。
さすがグーグル。と思わされる一冊。学べるところは真似したい。
もの食う人びと
言わずと知れた、食を切り口にしたルポの金字塔。スパリーング、と称して行くバングラデシュから、私の常識メーターはいきなり振り切れる。
この本は10年以上前に古本屋で買い、しゃぶりつくように読んだ。面白い、という言葉では表せない、怖さも悲しさもありながら、未知の世界があることの好奇心も刺激された。だから100円で買った本なのに、ずっと本棚にしまってあった。
それを今日久しぶりに開いた。
この本は1993年頃の世界だ。
これからなんと、20年以上も経過している。さて、世界は変わったのだろうか。
アジアは目覚しい経済発展を遂げ、人件費が高騰する中国から、バングラデシュに世界の工場は変わりつつある。まだ、残飯市場があるかどうか、それは分からない。
ベトナムはもう、だいぶ変わっただろう。フィリピンはどうだろうか。
日韓の関係はどうだろう。一回少し近づき、また離れたような気がする。
そして、日本自身がチェルノブイリのような事態になっている。
この本はジャーナルでありながら、とても細かい人物描写が多く、それがこの本を魅力的にさせる。セキセイインコは世界中、色んなところで飼われてるな、なんてことを知った。本の主題とは全く関係ない。
そして21世紀も15年が過ぎ、私たちは一見すると豊かになった。インターネットが出来て、情報も多くなった。
しかし、後付を読んで思い知らされた。見えない像を見て、聞こえない声を聞く。今の時代はむしろ、わかかか、その視点が軽んじられているように思われる。
今なお、読む価値のある一冊だ。