モサドファイル

読みたかったイスラエルモサドに関するドキュメンタリー。世界最強の集団と呼ばれる所以を、存分に味わいたかった。

国家としてのイスラエルの歴史は案外浅い。第二次大戦後に建国しているから、まだ70年くらい。70年の歴史は、ほぼモサドの歴史と重なる。歴代のモサド長官のエピソードを中心に、過去の作戦を紹介。さながらスパイ小説を読んでいるかのような気分になる。

いとも簡単に身分を偽り、スパイ工作を行っていく。これは本当に現実の話なのだろうか。あまりによくできていて、フィクションなのかと思い込んでしまう。時々、アサド将軍、ビン・ラディンなど、ニュースで知った名前が出てくるのが生々しい。

当然、うまくいった作戦ばかりが紹介されていて、ドキュメンタリーだから、割と淡々と話が進んでいく。もしこれが小説なら、少し物足りなく感じるだろう。でもこれは小説ではない。それを忘れずに読む必要がある。

中東の世界は常に揉めている。日本にいると、戦後は本当に平和で、戦火なんて歴史の中でしかないけれど、ここにはまだすぐ隣に火種が潜んでいる。一瞬たりとも気が抜けない状況が見て取れた。

また、ユダヤ人社会とイスラエルの国家は、一枚岩なのかと思いつつ、案外そうでもなかったりする、実情も知ることができた。発見は多い。

現実のスパイに興味がある、中東情勢に関心がある、現代の戦争に考えのある人にお勧めしたい一冊だ。