今、飛行機に乗っている。
年末に奥さんの実家に帰省するための、羽田から沖縄に飛ぶ飛行機。年末の帰省だから、ずいぶんと前に予定を決め(といっても、泊まるのは実家だから、飛行機を予約するだけなのだけど)、できるだけ安く行くため、当然エコノミーの席に乗っている。

世の中の会社という会社の営業が終わり、一斉に帰省する。空港も相当な混雑ぶりだった。
機内も当然混んでいる。まぁ、立ち席なんてのはないから、せいぜい満席ではあるのだけれど。

羽田から沖縄までは結構遠い。特に行の便は3時間くらいかかる。普段は仕事でせいぜい1時間半から2時間がいいとこだから、その倍、ちょっとした海外旅行くらいの時間、狭い座席で過ごすことになる。

音楽を聴く人、寝てる人、本を読む人、時間の使い方はそれぞれだけれど、びっくりすることに誰もリクライニングをしていない。何をしている人も、直角にちょっと角度のついた背もたれに収まっている。

これはちょっと不思議な光景だ。なぜこんなことになったのだろう。二人隣の女性は膝に抱えた鞄を枕に、突っ伏したように寝ている。あれはしんどい態勢なんじゃないか。。。

なぜ人はリクライニングを倒さないのか。暇な機内で考えてみた。

最初に思ったのは、後ろのお客さんに対する後ろめたさと、一言声を掛ける面倒さだ。最近機内では、リクライニングを倒す時は後ろの方へ一言、、、とアナウンスされる。これはリクライニング防止に大きく役立っている。後ろの人が太っていたり、不機嫌だったりされたら声をかけたくないし、そもそも喜ばれるようなことではないし。だったら我慢する方がストレスが少ない、と考えるのだろう。

次に感じたのは、座面のサイズだ。飛行機の座席の広さはしばしばシートピッチという前の席との距離で計られる。このシートピッチが、快適さを表す指標となり、広告でもうたわれる。しかしながら、座面のサイズについては聞いたことがない。感覚でしか分からないが、この椅子の座面は小さい。もっと分かりやすく言うと、浅くしか座れない仕組みになっている。その結果、角度を付ければ付けるほど、お尻が前にズリズリと下がり、やがて落ちそうな不安に駆られる。太腿から下の不安定さがリクライニング防止につながってる、というのが2番目の説だ。

最後は、ながら○○のしにくさだ。飛行機は飛ぶとやや暗い。暗いので読書灯をつけるのだが、その光の位置が前すぎる。リクライニングをすると、光の位置はますます遠くなるので、結局リクライニングは起こしたまま、となるのだ。

うーん。色々考えてみたのだけど、基本的には全て私の体型が前提だから、皆に当てはまるわけではない。

みんな格安チケットで乗ってるから、恐縮している、、、みんながみんなそんなはずもないか。

きっと乗ってる人は帰省だったり、家族と暖かいところで正月を迎えようとする旅行者だったりするのだろう。仕事ではなく、プライベートな時間を、ゆっくり大切な人と過ごす予定の人たちだ。もしかしたら、その余裕が後ろの人への優しさになっているのかもしれない。あるいは、楽しい時間に、他人の不機嫌さを入れたくない、ということなのかもしれない。

なんかそう考えたらこの規則正しくならんだ椅子の背もたれが、心地良く見えてきた。一年の終わりに、この飛行機の中の時間が、パブリックからプライベートに変わる慣らし運転の様な時間になっているのかもしれない。

あと30分で到着するとアナウンスが入った。まだあと30分もあるのか!