父親に癌が見つかった。
まだ初期なのかどうかはよく分からず、これから精密検査とのこと。

さすがに落ち込む。

今年は母親の七回忌の年。そんな年が始まって、こんなことになるなんて。

大事にならなければ、と思うものの、やはり死ぬことを意識してしまう。

母親が死ぬ前に、もし元気になったら一緒にパリに行きたい、と言っていた。父親がパリが好きで、母親も楽しい思い出があったのだろう。

母親はもういないけど、いつか父親とパリに行きたい、そう思っていた。簡単に行けると思ってた。だけど、いつでも行けると思っていたら、結局行かないままになっている。
今はもう結婚して、奥さんにも相談しないといけない。

奥さんは、父親のことは嫌いではないけれど、子どもからの援助を受けて暮らしていることを快く思ってはいない。そりゃそうだ。自分たちの家が狭いのは父親のせいだと感じている。

そんな中、パリに行きたい、と言っても、気分は良くないだろう。

でも、うまく話したい。

残された時間を意識し始めた瞬間、焦ってしまう。母親の時のことを思い出してしまう。

自分は親に産んで育ててくれたお返しができているのか。

後悔しないように、やれるだけのことはやりたい。畜生。自分の無力さを嘆きたくなる。嘆く暇があるくらいなら、一生懸命生きろ。頑張り時は今だ。