喜劇

ウディアレンのスコルピオンの恋まじない。それほど期待せずに借りたものの、非常に面白かった。ある種ドタバタコメディで、そんなことあるかい!と突っ込みたくなる気持ちもなくはないけど、そういうことを言っては無粋だ、とばかりのストーリー。

あぁ、なるほど、三谷幸喜の映画を見た後の読後感に近い感覚があるものだ。三谷幸喜の本に名前が出てくる理由も分かる。気持ち良く、笑わせてもらった。

笑いというものは、本質的には残酷で悲しみが裏側にあると考えている。テレビをつければ、自分か他人を傷付けて笑いを得る。見ている人は安全地帯から、こんな人より自分はましだ、と優位になりなることで、笑いやすい環境が作られる。基本的には痛々しくて涙が出てくる。さだまさし道化師のソネットを聞いている気分だ。

今回の映画は、そういう痛々しさを感じさせない工夫が多い。とても気持ちが良い。

たぶんそれは、ウディアレンが自分で脚本を書き、自分で演じているから、道化になりすぎないギリギリのプライドを見ている人に感じさせ、引き込むことに成功しているのだと感じた。やっぱり、大した人だ。