フランス的

イカとクジラ
タイトルでは、なんのこっちゃさっぱり分からない映画。ウェス•アンダーソンがプロデュースということで、テンポの良い軽妙なユーモア作品かと思いつつ借りてみた。



全然違った。


痛々しくならないギリギリの、ダメな人間で構成された家族。親の悪いところに影響されまくる子どもの姿も、行きすぎた思春期として、理解の範疇を越えない。だからユーモアだと感じることができるレベルをキープできている。

イカとクジラは、ひょっとしたら性的な、というか下ネタ的なメタファーかと思いつつ、終わってみたらそんなことはなかった。下品な自分を恥じる。

子どものために苦手な料理に励む父親。床に落ちたハンバーグは決しておいしそうではない。ただ、ハンバーグを待つ付け合わせの人参はとても印象的。ピーターラビットに出てきそうな、細く葉の付いた人参。不器用に焼いて、きっと中は生焼け。おいしそうではないけれど、詩的というか、芸術的ですらある。エピソードとしては、ハンバーグの方が意味深いけれど、個人的にはあの人参の印象が大きかった。

奥さんが、フランス映画みたいな映画だね、と言った。その印象は、まさにウェス•アンダーソン自身のイメージ。プロデューサーの色をこういう風に感じさせるとは!と、思わず膝を叩いた。