悲しき人間の性

今夜、すべてのバーで

大変失礼ながら、読むまで、この本は昭和のバブルのイメージがあった。勝手な先入観で、トレンディドラマのような話なのかと誤解していた。

とんだ誤解で、入院中の話だったとは! 意表を突かれつつ、面白く読んだ。この話の良いところは、登場人物全員が、人それぞれの優しさや希望を持っていること。アル中で入院、人も死んだりする話であるが、どこか人の優しさに触れたような読後感に包まれる。

実体験に基づく具体的な薬物の名前なんかが、リアリティを持って読ませてくる。

最後のシーン、病院を出てバーに行くシーンはあまりにあっさりしすぎかとも思ったが、人の優しさで人は変われるという、まさかの綺麗事で締められた。綺麗事をサラリとやってのける強さが、どこか羨ましくもあった。