もの食う人びと

言わずと知れた、食を切り口にしたルポの金字塔。スパリーング、と称して行くバングラデシュから、私の常識メーターはいきなり振り切れる。

この本は10年以上前に古本屋で買い、しゃぶりつくように読んだ。面白い、という言葉では表せない、怖さも悲しさもありながら、未知の世界があることの好奇心も刺激された。だから100円で買った本なのに、ずっと本棚にしまってあった。

それを今日久しぶりに開いた。

この本は1993年頃の世界だ。
これからなんと、20年以上も経過している。さて、世界は変わったのだろうか。

アジアは目覚しい経済発展を遂げ、人件費が高騰する中国から、バングラデシュに世界の工場は変わりつつある。まだ、残飯市場があるかどうか、それは分からない。
ベトナムはもう、だいぶ変わっただろう。フィリピンはどうだろうか。

ヨーロッパはまた激動だ。EUが誕生し、ドイツはまた西側諸国のリーダーとなりつつある。コソボ紛争は終わり、東ヨーロッパはロシアとウクライナが緊張関係にある。

アフリカはそれ程大きく変わっていないかもしれない。エイズは、少し治まったのか、あまりニュースで聞かれないが、昨年はエボラウィルスが猛威をふるった。

日韓の関係はどうだろう。一回少し近づき、また離れたような気がする。

そして、日本自身がチェルノブイリのような事態になっている。

辺見庸氏が旅に出るならどこに行くのだろう。きっと中東は外せない。パレスチナイスラエル、みたいな形で入り込んで行くのだろう。

この本はジャーナルでありながら、とても細かい人物描写が多く、それがこの本を魅力的にさせる。セキセイインコは世界中、色んなところで飼われてるな、なんてことを知った。本の主題とは全く関係ない。

そして21世紀も15年が過ぎ、私たちは一見すると豊かになった。インターネットが出来て、情報も多くなった。
しかし、後付を読んで思い知らされた。見えない像を見て、聞こえない声を聞く。今の時代はむしろ、わかかか、その視点が軽んじられているように思われる。

今なお、読む価値のある一冊だ。