子どもたち
たまたま入った古本屋で買ったチルドレン。伊坂幸太郎。
軽快な読み口で、楽しみながら読める。昔、浪人時代に予備校の夏期講習で、前頭葉を刺激する化学、という名前の講座があったのだけど、この本もちょうど良く前頭葉を刺激される感じだ。
登場人物が重なり合う5つの短編。とはいえ、印象に残るのは目の見えない男永瀬と、常識的ではない家裁調査員の陣内。この二人の超人的なエピソードで話は進んでいく。
昔から、体のどこかが不自由だと、別の機関が極めて発達する、ということが暗黙知的に共有されているように思っている。ベートーヴェンの影響が大きいと思うのだけど、体の不自由な天才というのは、ある種の神話的なエピソードを以って語られる。そして、ただの天才だと、そんなやつはいないよ、となるところが、そういうこともあり得るかも、と、多くの人を信じさせることができる(ような気がする)。
また、陣内の破天荒な性格も漫画的だ。近くにいたら迷惑のような、でもちょっと憧れるような、そんなタイプ。なんとなく、こうやって自由に生きて、言いたいことを言える性格がうらやましい。なんか、今の自分は人の印象に残らないような、つまらない人間に思えてしまうほとだ。
楽しく読めたものの、そういった超人キャラが二人いることで共感はしにくく、面白くはあったものの、人に強く勧めるほとではないと感じた。