アフリカの蹄

帚木逢生氏の小説は、浪人時代に新宿の本屋でたまたま手に取って以来、読み続けている。医者ならではの医療ネタは説得力もあるし、勝手に名門だと思っている東大仏文科出身の人物描写、表現力はさすがである。

アフリカが舞台の本小説、Amazonで買えたので買ってみたが、なんとなく、これは読んだことのある本・・・と思いながら、ただ忘れている部分もあったので、楽しく最後まで読み終えた。グローバルな視点での貧富の差が作り出す悲惨な状況、アフリカのサハラ砂漠以南が、ある種の実験場となっていることに警鐘を鳴らす壮大なスケール。

中でも印象的だったのは、各国からの開発援助の話。大量の衣服の援助は、国内の産業をダメにし、教育援助はすぐに帰ってしまい自国での育成を阻害している、という部分。また、読んでいて、日本には「古き良き時代」があって、しばしば「昔は良かったね」となるところ、このアフリカの国では、改善すべき点ばかり見えて、とても今の生活の中で後世に残していきたいと思える社会が見つからなかった。

アフリカに行ったことがない自分は、本当のところ、どうなのかは全く見当がつかない。アフリカの発展のための援助は少なくとも私が小学生の時から行われている。それは未だに改善した、という話が聞かれない。一体何が問題なのだろう。そう思うと、やるせない思いが残る。

この本は全てハッピーエンドなのだけど、読んだ後に、何か重たい気持ちにさせられる。このお話が、本当にあったらいやだな、と思う反面、実際もきっとこうだからせめてこうなっても欲しい、と、そう考えられた。